記者の目 / 開発・分譲

2007/3/30

「SNS」を具現化したソーシャルアパートメント

コミュニティーを重視した賃貸マンション

 一般的に「ゲストハウス」「ドミトリー」と聞くと外国人留学生、帰国子女が利用するイメージが強いかもしれない。しかし、昨今ではマルチハビテーションやコミュニティー形成を目的に利用する人も増えている。そんなドミトリーとマンションを融合した、新たな賃貸マンション「ソーシャルアパートメント読売ランド」(川崎市多摩区、総戸数44戸)が誕生した。

各部屋には必要最低限の家具が設置してあり、ウォールカラーによって印象が変わる。写真の色は「きみどり」
各部屋には必要最低限の家具が設置してあり、ウォールカラーによって印象が変わる。写真の色は「きみどり」
共用廊下はシックな色合い、各所にはソファーやミニライトが置かれ、雰囲気を出している
共用廊下はシックな色合い、各所にはソファーやミニライトが置かれ、雰囲気を出している
フィットネスルーム(上・after)の場所は、元倉庫(下・before)
フィットネスルーム(上・after)の場所は、元倉庫(下・before)
昔ながらの浴場(上・before)は、清潔感のあるシャワールームに(下・after)
昔ながらの浴場(上・before)は、清潔感のあるシャワールームに(下・after)
(上・after)プールーバー。壁や天井はの元厨房(下・before)の雰囲気が生かされている
(上・after)プールーバー。壁や天井はの元厨房(下・before)の雰囲気が生かされている
プールバーに続いているラウンジ(上)、下はミニラウンジ
プールバーに続いているラウンジ(上)、下はミニラウンジ

ドミトリー+賃貸マンション=“ソーシャルアパートメント”

 リノベーション事業を展開する(株)リビタでは、「普通の賃貸ではつまらない」「学生寮や社員寮ではプライバシーが無い」「気軽にいろんなところに住んでみたい」という入居希望者のニッチな要望に応える“ソーシャルアパートメント”を展開している。
 このプロジェクトは、もともと独身寮やオフィスビル、住居兼SOHOだったマンションを、ドミトリースタイルの賃貸マンションに一棟リノベーションするもの。安価で手軽に入居でき、入居者が潜在的に求めている“住まう人同士の交流”や“共同生活の楽しさ・安心感”などを実現するためコミュニケーションの場を提供している。
 また、入居後すぐに生活ができるよう、各部屋にはベッドや机などの家具類があらかじめ設置してある。
 ソーシャルアパートメントとは、バラエティ豊かな住人同士のコミュニティー形成と、マンション並みの住み心地を可能とした新しいタイプの賃貸マンションなのである。

コストを抑え、設備を充実

 「ソーシャルアパートメント読売ランド」は、学生のまちである小田急線「読売ランド」駅から徒歩15分にある、築16年の企業寮を一棟リノベーションしたもの。RC造陸屋根地下1階付き3階建てで本館と女性専用館に分かれている。延床面積1,351.17平方メートル、間取りはワンルーム(専有面積8.93~26.58平方メートル)で、賃料は46,600円~、共益費(専有部水道光熱費、インターネット使用料、共用部清掃費を含む)は13,000円。契約は、6ヵ月の定期借家契約としており、敷金・礼金はない。
 各部屋の専有部に設置されたデスク&チェア、冷蔵庫、カーテン、ベッド、収納は(株)良品計画の「無印良品」で揃え、インターネットも光ファイバーを完備。必要最低限のモノで構成されている部屋はややこざっぱりし過ぎの印象があったが、部屋ごとに違うウォールカラー(全5色)によって温かみが加わっている。また、各部屋のキーはICカードを採用しており、セキュリティ面も安心だ。
 ドミトリータイプのため、シャワールームやトイレなどは、共用となっている。一般的なワンルームタイプの賃貸住宅ではユニットバスの場合が多く、バスタブ自体は使わないという意見が多かったことからシャワーを共用としたそう。シャワールーム前にはくつろげるソファーが設置してあり、共用部の一つとして活用できそうだ。

学生の意見を反映。「コミュニティ」としての共用部

 また同物件の注目すべき点は、管理・運営を学生起業家が立ち上げた会社(株)グローバルエージェンツに委託していることだ。AM・PMを主軸としている同社の意見を物件の随所に導入。いまやネットユーザーにとって当たり前となったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)というシステムとマンションの融合という新しい概念の基、共用部の充実を図り、SNSで“コミュニティー”(SNS上で共通の趣味や考えのもと集まるグループの名称)に当たる役割を担わせている。
 具体的には、シアタールーム、24時間無料のフィットネスルーム、大小のラウンジなどがあり、設置してあるインテリアもまさにお洒落カフェの雰囲気だ。特に注目すべきは、ラウンジと一続きになっているプールバー。本格的なビリヤード台とバーカウンターを設置しており、このマンションの中心的な存在となっている。以前は厨房として使われていたフロアの壁や天井の配管などはそのまま残し、味わい深い空間になっている。

生活ルール・入居審査は厳しく

 こういったコミュニティーに敏感なのは女性の方が多いようで、契約者の6~7割を女性が占めているという。女性専用の棟もあるが、実際は共用部が充実している本館に人気が集まった。また学生街という土地柄、近隣の学生が多いのかと思えば、20代を中心とする社会人、外国人、学生などさまざまなタイプの入居者が決まっており、「駅から遠い」という大きなハンデを覆す結果となった。
 しかしながら集団・共同生活にトラブルは付きもの。しっかりとした生活ルールを設けるとともに、入居審査を厳しくすることでトラブルの未然防止を図っている。入居条件は、日本人の場合は連帯保証人(署名ならびに印鑑証明書)、身分証明書、外国人の場合は就労ビザもしくは外国人証明書となっているが、「社交性、共同生活のルールを守れる人」を共通条件としており、実際の入居審査では人柄をよく見て厳しく判断しているそうだ。

オリジナルの付加価値がポイント

 同物件はHPでの公開、外国人向けフリーペーパーへの掲載、学生のクチコミのみですでに44戸中34戸、約4分の3がが成約済み(2007年3月23日時点)だという。決して立地が良いとは言い難い同物件だが、オリジナルの付加価値が高い評価を得た結果といえよう。
 世の中では、賃貸ワンルームマンションの成約率はいまだに厳しい状態が続いている。同時に既存物件の有効活用が叫ばれている中、これからは世の中のニーズに合った付加価値がポイントになってくるのであろう。(umi)

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2024/5/1

「海外トピックス」を更新しました。

サントスの「動く博物館」と中心街の再活性化【ブラジル】」を更新しました。

ブラジル・サンパウロ州のサントスでは、旧市街地2.8キロをめぐる「動く博物館」が人気となっている。1971年には一度廃止された路面電車を復活して観光路面電車としたものだが、なんと日本から贈られた車両も活躍しているという。